ミサイル防衛計画(MD計画) 

更新履歴 2006年8月8日作成。 2006年9月26日記事追加 *1。 2007/06/10 PAC3搬入以後のニュースを整理 *2 / 2013/05/02  リンク先を更新

パトリオット地対空ミサイル

 パトリオット・アドバンスド・ケイパビリティーの頭文字をとったもので、「パトリオット先進能力」と日本語訳される。これは強力な電波妨害のもとでも高高度から、高い位置から低高度まで高速で進行する機動性の高い航空機の同時攻撃に対処するため開発された広域防空システムで、戦術弾道ミサイル、巡航ミサイルなどの新たな脅威に対応するため改良を続け、それぞれPAC1、PAC2、PAC3と呼ばれている。この武器の仕様等詳細な説明は次のHPで見ることができる。 → ここ

本ページでは入間基地に配備予定のPAC3をめぐる状況を特集した。

MD計画に関する国会議論=国の安全保障に関する件(平成十七年度以降に係る防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画)は2005年第162国会で行われている (大野防衛庁長官)。

PAC2 航空自衛隊入間基地高射部隊 装備

入間基地ホームページより引用
LS・発射機
ペトリオット・ミサイルというとこれだけだと思う人も多いだろうが、これはあくまでも発射機。操作は射撃管制装置から行う。
ECS・
射撃管制装置

ペトリオット・システムの管制を司る装置。TCA、TCOと呼ばれる隊員が装置の中に入り、システムの操作を行う。
RS・
レーダー装置

レーダーというと、大きなパラボナアンテナのようなものがクルクルと回っているというイメージがあるが、ペトリオット・システムではこれがレーダー。標的の捜索や追尾、ミサイルへの指令などがここから出される。

 

AMG・アンテナ・マスト・グループ
通信を担う装置。部隊内だけでなく、離れた他の部隊とも連絡をとり、連携を可能にする。
EPP・電源車
システムへ電力を供給する電源車。

リロード(reload)=積降 

発射機から下ろす→輸送機に載せる→移動する

炊事車
隊員の食事を作るための車両で、中にはキッチンが。荷台を展開すると、テーブルにもなる多機能車。災害派遣にも使用される。
待機車
基地を出て任務に就く際に、隊員たちが休息をとるための車両。中には長いすがあり、3段ベッドにもなる。
高射部隊は、基地から出て任務にあたることが想定されている。高射部隊は専門の職種がグループ化されており、1部隊だけで仕事が完結するよう設計されている。 器材のけん引、設置、操作、炊事、警備の訓練は年数回。

 PAC3の配備を前にして衆院塩川議員、あやべ澄子参院議員候補、入間基地周辺自治体の議員が入間基地を調査したところ、高射部隊がトレーラーなどで移動・分散する基地外には、民有地も含まれることを確認した。=2006.7.23 日高民報 1596号 

 このPAC3の移動にあたり、高射砲隊が国道や県道、市道を通過する時の優先順位はどうなっているのか? すでに住民の避難は始まっている(国民保護法に基づき自治体が指示)であろうから混乱は避けられない。すでに国民保護訓練を実施した自治体の住民から強い懸念が示されている(H18年4月7日内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付作成の「平成17年度国民保護に係る訓練の成果について」に述べられた参加者の感想=平和運動誌’06−7月号p17 平山論文で紹介)。

PAC2に関して次のような議論がある。

 湾岸戦争でイスラエルが使ったのと同じパトリオットミサイル。「散弾銃で相手のミサイルを壊す」という設計思想に基づいています。 ところが、これは迎撃効率があまり思わしくなかった上に、敵ミサイルに核・生物化学兵器が詰まっていた場合、それを拡散させる可能性があります。
 また、射程も短く、突然発射された場合の対応がどこまで出来るかは判りません。 = (第162国会大野長官答弁をもとに推定)

 もしも東京が狙われた場合には、埼玉県にある航空自衛隊入間基地のペトリオットで迎撃することになります。ただしペトリオットミサイルの破片が地上に降ってくるので、攻撃用弾頭を搭載しているなど、着弾による被害が迎撃した場合に生じる被害より大きいと思われる場合でなければ何もしない方が無難と考えます。攻撃用の弾頭を搭載している場合は、ミサイルの破片が降ってきてもそれは仕方ないとするしかないでしょう。核弾頭を破壊してプルトニウムが降ってきても、核爆発が起こるよりはマシと考えるしかありません。= (第162国会大野長官答弁をもとに推定)

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PAC3

Q 自衛隊が配備を進めているMDはそもそもどんな仕組みなの。

 A 発射された弾道ミサイルは(1)推進装置で打ち上がるブースト段階(2)燃焼が終わり弾頭が切り離され大気圏外で放物線を描いて飛ぶミッドコース段階(3)大気圏内に再突入し目標に向かうターミナル段階−−の3段階に分類される。自衛隊のMDは、まずミッドコース段階でイージス艦搭載の海上配備型SM3ミサイルで迎撃。さらに撃ちもらしたミサイルは、ターミナル段階で地上配備のPAC3で破壊する「地上型」「海上型」の2段階なんだ。

 Q 今でもミサイルが迎撃できるの。

 A 地上型のPAC3は今年度末、海上型のSM3は来年度末までの配備予定だ。つまり、まだ自衛隊には全く迎撃能力がない。今できるのは、イージス艦と地上配備型レーダーで弾道ミサイルを捕捉、追尾する警戒監視活動だ。

 Q 在日米軍の方が先に迎撃能力を持つわけだね。

 A その通り。嘉手納基地のPAC3は今年12月から運用開始。米海軍もSM3搭載のイージス艦「シャイロー」を8月に横須賀に配備する。

 Q 自衛隊が配備するPAC3は日本全国を守れるの。

 A 計画では、航空自衛隊の入間(埼玉)、浜松(静岡)、岐阜、春日(福岡)の各基地の高射隊に配備される。でも、PAC3の射程は20キロ程度だから、迎撃対象となるのは関東、中部、関西、九州北部の都市部を狙ったミサイルだけだ。米軍嘉手納基地のPAC3は沖縄だけが対象となる。

 Q 額賀福志郎防衛庁長官は「MD配備の前倒しを検討する」と国会で答弁していたけど。

 A 防衛庁内で検討しているけど、大幅な前倒しは難しそうだ。これまでもなるべく早く配備しようと計画してきた。製造会社の生産能力が急に上がるわけではないという事情もある。大幅な防衛関係費の増額があるなら事情は別だが、政府内は厳しい財政事情で「MDだけ特別扱いというわけにはいかない」という雰囲気だ。

 Q MDは米軍と共同で運用するの。

 A いずれにせよ、米軍との協力は不可欠だ。赤外線で熱源を感知する早期警戒衛星は米軍にしかない。だから、ミサイルを発射した瞬間が分かるのは米軍だけで、自衛隊は情報をもらう立場だ。

 Q そもそも、MDで弾道ミサイルが迎撃できるかも議論がある。

 A 米軍は迎撃実験が成功してきたと強調しているが、実戦配備とは全く条件が違う。どの程度の確率で迎撃できるのか、はっきりした数字はどこにもない。「だいたい当たる」という人もいれば「数%程度」という人もいる。「他に手段がない以上、国民を守るためにMD配備は必要だ」というのが政府の立場だ。

 Q 大掛かりな装備になるけどコストも気になるよね。

 A MDシステムの整備は04年度から始まっていて3年間で約3500億円が予算化された。今の計画では11年度におおむね整備が完了する予定で、総額は1兆円程度ではないかと言われている。しかし、新しい装備の導入などで将来的にはさらに膨らむ可能性が高い。これとは別に、日米で次世代SM3ミサイルの共同開発をしていて、日本は9年間で10億〜12億ドル(約1170億〜1404億円)を負担すると約束しているんだ。

以上=毎日新聞 2006年7月21日 東京朝刊

迎撃ミサイル:米が今秋に沖縄配備を発表 国内初

 米政府は20日、地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット3」(PAC3)を今秋、沖縄県の米空軍嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区に配備すると発表した。配備基数は明らかにしていないが、20基程度になるとみられる。PAC3は外国から日本に向けて発射された弾道ミサイルを迎撃するミサイル防衛(MD)システムの一環で、来年3月から埼玉県の航空自衛隊入間基地など空自4基地に配備されるが、国内配備は嘉手納が初めて。これを受け、北原巌男防衛施設庁長官は同日、沖縄県の稲嶺恵一知事や関係市町村の首長に配備の説明を始めた。嘉手納町など沖縄の自治体は「新たな基地負担になる」と反発している。

 PAC3配備で、日本の弾道ミサイル対処能力はミサイルを捕捉、追尾する能力しかない警戒監視段階から、迎撃段階に移行する。

 PAC3配備は、今年5月に日米両政府が最終合意した在日米軍再編協議で米軍基地への配備が盛り込まれていた。外務省によると、配備に伴い、米陸軍防空砲兵大隊の4個砲兵中隊約600人が8月から段階的に配置され、9月以降、米国から装備品を移転。12月末までに一部運用を開始し、来年3月ごろ配備を完了する。

 北原長官は午前9時半、沖縄県庁を訪れ稲嶺知事に説明。この後、嘉手納町の宮城篤実町長にも報告した。午後には沖縄市や北谷(ちゃたん)町など5市町村にも説明する。

 しかし、嘉手納基地を抱える嘉手納町、北谷町、沖縄市の首長と議長でつくる「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」は、負担軽減に逆行するとして配備に反対している。嘉手納、北谷両議会もそれぞれ既に抗議決議を可決。沖縄市議会は可決予定だったが、決議案審議の今月5日に北朝鮮がミサイル発射実験を行ったため、審議が見送られた。【古本陽荘、三森輝久】

 ▽パトリオット3(PAC3) 国内に接近する弾道ミサイルに体当たりして撃墜する誘導ミサイル。射程は十数キロとされ、ミサイルが落下する直前に迎撃する。航空自衛隊へのPAC3は入間基地のほか、浜松(静岡)、岐阜、春日(福岡)の3基地で、関東、中部、関西、九州北部の都市圏をカバーする計画。旧世代のPAC2は全国の空自高射隊基地に配備されているが、基本的には防空網をかいくぐった侵入機を撃墜するミサイルで、弾道ミサイルの迎撃は困難と言われる。ただ、PAC3も「ピストルの弾丸をピストルの弾丸で撃つようなもの」と、その実効性を疑問視する声もある。

以上=毎日新聞 2006年7月20日 11時00分

 嘉手納町役場で北原長官と面談した宮城篤実町長は「PAC3配備は町民を守るためではなく、嘉手納基地を防御するためのもので納得できない」と批判した。(沖縄タイムス2006年7月20日夕刊1面)

PAC3が展開する場所は?

大野国務大臣 一つの問題は、民有地を借り上げなければ有効な迎撃態勢ができないんじゃないかという報道がある、これは私も存じておりますけれども、実際にどういうふうな配備をやっていくか、具体的な展開地については現在検討しているところであります。
 PAC3は、まずは自衛隊の施設、これが第一候補に挙がってこようかと思います。それから、まず自衛隊の施設ということでも、ペトリオットPAC3の能力は十分発揮できるものと考えております。
 では次に、自衛隊以外の施設はどうなんだ、こういうことでありますけれども、国や地方公共団体の所有地へ展開すること、これも念頭にしっかりあるわけであります。
 現在、民有地への展開は想定いたしておりませんけれども、万々々が一展開する必要が生じた場合、このような場合には所有者との契約ということになりますが、現在は民有地については考えておりません。(第162国会大野長官答弁)

命中率は?

大野国務大臣 イラク戦争でのPAC3、これはPAC2もありましたけれども、イラク戦争ではPAC3とPAC2のいわば能力向上型が用いられておりますけれども、このシステムで九発の弾道ミサイルのうち八発迎撃に成功しておる由でございます。残りの一発も、未確認でありますが、恐らく迎撃に成功したというのがアメリカの国防省の発表、公表でございます。(第162国会大野長官答弁)


ミサイル防衛(MDシステム)  PAC3配備前倒し 07年中に配備の方針(日本政府)

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2006年8月30日、三菱重工長崎造船所でイージス艦「あしがら」が進水し儀装工事へ。「ミサイル防衛」体制へ大きくシフト。 長崎県平和委員会報道写真はここ 

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PAC3@入間基地

2007年3月30日 PAC3 入間基地に搬入 (写真はここ

2007年3月31日 PAC3 搬入キャンペーン (ポスターはここ

2007年3月31日 久間防衛大臣記者会見 (会見内容はここ

2007年4月13日 PAC3 一般公開実施(写真はここ

2007年4月7日  北朝鮮が反応 北京週報(日本語版)が報道 


2007年3月23日 日本政府は閣議で、他国が日本に向けて弾道ミサイルを発射した際の対応を定めた「緊急対処要領」を決定した。日本のミサイル防衛MD)システム整備の第1弾として今月29日、航空自衛隊入間基地(埼玉県)に地対空誘導弾パトリオットPAC3)ミサイルが配備されるのに合わせた措置。 

 

 

 

2013年05月02日 更新