米軍再編と横田基地をめぐる自治体の態度 

2013/05/02

 在日米軍再編に関する「中間報告」では、米空軍横田基地(東京都)への日米統合司令部(共同統合運用調整所)の創設や航空自衛隊の戦闘司令部(航空総隊司令部)の移転、キャンプ座間でのUEXと陸上自衛隊の新戦闘司令部(中央即応集団司令部)の設置を計画しています。こうした司令部機能の統合をはじめ基地の共同使用、演習の拡大などを通じ、両軍の一体化をいっそう深化させようとしています。

米軍再編に首長・自治体が猛反発/JCP特集2005

の中に、『瑞穂町 石塚幸右衛門町長「(米軍横田基地の)軍民共用化に対して『だめなものはだめ』とはっきり主張します」 』との文章がある。しかし、2006年2月11日、瑞穂町長はこの態度を一変させた。以下、その経緯を新聞報道などから追ってみる。

1、瑞穂町からのニュース

平成18年第1回瑞穂町議会定例会で、石塚町長から18年度の施政方針が発表されました。
そのあらましをお知らせします。

はじめに、在日米軍再編に関する中間報告における横田飛行場の航空自衛隊との共同使用について、改めてこの度の決定について私の考えを述べ、町民の皆様にご理解を賜わりたいと存じます。
私は、世界平和と日本の安全があって、はじめて瑞穂町の安全があると考えています。
従って、今回の航空自衛隊との共同使用が、耐え難いほどの大きな負担でない限りは、国策に協力すべきであるとの思いです。
しかし、国の安全にかかる負担は、全国民が均しく担うべきもので、より負担の重い基地等防衛施設所在の自治体に対して、国は手厚い振興策を実施すべきであり、また、それを国に求めるのは当然のことと考えています。
今回の計画案では、航空総隊司令部と関連部隊が移駐しますが、常駐機の配備はなく、連絡機が飛行する程度であるとの説明を受けています。
従いまして、自衛隊との共同使用については、世界平和と日本の安全を守る国策であることを思量し、町民の生活環境を著しく悪化させるものでないと判断し、概ね容認する旨を発表したものです。
また、この計画を容認することで、町民の生活環境をより悪化させる軍民共用化の動きを封じることができるとも考えています。

さて、平成18年度は、長期総合計画後期基本計画のスタートの年であります。
基本構想の将来都市像「人と自然が織りなすまち みずほ―快適な生活環境をめざして―」の実現に向けて全力で各種施策に取り組む所存です。

以下に、重点施策を中心に申し上げます。 (以下省略=編者)

 日米両政府の在日米軍再編計画(「中間報告」)は、横田基地の軍民共用化(民間航空機の乗り入れ)についても「検討」するとしています。この問題をめぐり周辺自治体の態度に違いも生まれています。

 瑞穂町の石塚幸右衛門町長は「爆音被害を拡大する軍民共用化を阻止」するためとして、航空総隊司令部の移転を容認(二月十一日、既述)。一方、武蔵村山市の荒井三男市長は、逆に軍民共用化推進を表明しました(二月十四日)。

 米側は、在日米軍の中枢である横田基地を一部であっても民間に開放することには否定的です。

 米シンクタンクのハドソン研究所は〇四年六月、「軍民共用化より軍軍共用化を推進すべきだ」との報告書を発表しています。石塚町長は町議会でこの報告を引用し、態度表明の根拠としました。

2、(上)利益を優先「軍軍」容認(2006/05/11) (読売新聞報道)

瑞穂町が先陣、2市追随

 
写真:写真説明
2月13日の会見で、自衛隊との共同使用受け入れの理由を説明する石塚町長
 2月11日、横田基地周辺自治体関係者は大慌てとなった。その原因は1枚のファクス。瑞穂町から報道各社に送られたファクスには石塚幸右衛門町長の名でこう書かれていた。「住民の生活環境を著しく悪化させるものでなければ、おおむね容認したい」

 基地を自衛隊が共同使用する「軍軍共用化」を容認する――。昨年10月に発表された米軍再編の中間報告に共同使用が盛り込まれて以後、地元5市1町がいずれも慎重姿勢を保っていた中での出来事だった。

 5市1町でつくる「横田基地周辺市町基地対策連絡会」はその5日前、国に「基地の整理、縮小、返還」を要請したばかり。ある市の幹部は「軍軍共用化は基地の機能強化につながり、基地返還とは相いれない。共同要請は一体何だったのか」と不満をぶちまけた。

 石塚町長はこの日、「受け入れを表明し、国からの支援策に期待した方が、町民の将来のためだ」と言い切った。後に、町議会委員会では額賀防衛長官らから受け入れるよう要請されたことも明らかにした。「防衛庁関係者からは、『受け入れてくれれば引っ越しそばの用意がある』とも伝えられていた」と町議の一人は言う。

    ◎

 「最もひどい騒音被害を受けている瑞穂がはっきりしなければ、よそは態度を表明できない」。石塚町長の脳裏にはそんな考えがあったという。この後、昭島市の北川穣一市長、武蔵村山市の荒井三男市長が相次いで「軍軍共用」容認を表明した。

 北川市長は「政治は理想と現実をどう埋めるかを考える必要がある。善悪は別として、横田が日本周辺の安全保障に寄与しているのは事実」とした上で、「地元が周辺住民の生活環境整備を国に求めるのは当然で、見返りを求めての表明ではないが、基地を抱える首長は、日本全体の安全保障と地元への影響の双方を考えなければ」と説明する。

 基地の民間機利用(軍民共用化)実現を目指す荒井市長は、容認は「軍民共用化実現を加速させるもの」とし、基地への交通手段としての多摩モノレールが延伸され、市内を横断することを思い描く。一方で「滑走路の延長上にある昭島市、瑞穂町が容認姿勢を示した」ことも表明の理由だとし、騒音問題に悩む両市町への配慮をにじませた。

    ◎

 現時点では、国から「引っ越しそば」についての具体的な説明はない。

 態度を保留した立川市の青木久市長は8日、「国が、容認した自治体と(保留した)立川との間で補助金を変えるようなことがあれば、それは大変なことだ」とし、容認したか否かを問わず、地元自治体には等しく支援があるべきとの考えを示している。

 

3、横田基地の軍民共用化やめよ、地元無視するな

 日本共産党の緒方靖夫参院議員、今村順一郎参院東京選挙区候補は9日、米軍横田基地(福生市など5市1町の騒音被害を軽減し、国・東京都が進めようとしている軍民共用化を強行しないよう、外務・国土交通両相に要請しました。党周辺市町議団の代表も参加しました。

 軍民共用化をめぐって国と都は、昨年末から今年にかけ3回の会合を開き、「共用化の可能性」を検討していますが、基地周辺自治体にはまともな説明もせず、「なし崩しの共用化。既成事実を重ねて我慢しろというもので、反対だ」(石塚幸右衛門・瑞穂町長)などの声があがっています。

 緒方、今村両氏らは、住民が米軍機の騒音や落下物の危険などで長年苦しめられており、民間航空機を修好させる共用化をすれば騒音被害が拡大すると指摘。@米空母艦載機のNLP(夜間離着陸訓練)など同基地での飛行訓練の全面中止A横須賀の空母母港の返上B横田基地に自衛隊部隊を移転せず、基地機能を変更についての情報提供C軍民共用化の検討内容の公表D住民の同意もない共用化の中止―などを求めました。

 外務省は北米局日米安保条約課の熊谷直樹首席事務官、国土交通省は航空局の森重俊也国際航空課長らが応対し、「騒音軽減に努める」と回答。軍民共用化について「検討内容は公表できない」としつつ、「一般論だが、地元の関心を踏まえるのが基本」と答えました。

 緒方、今村両氏らは「説明を求めても公表もしないまま共用化を進めれば、地元の信頼を損なう」と指摘しました。
 (緒方靖夫オフィシャルホームページ2004年6月10日記事の引用)

4、軍軍共用は、軍民共用化への大きなステップ

2006年 東京都議会予算特別委員会速記録第四号より、

谷村委員発言抜粋 ・・・・・ 多摩地域では、軍民共用化の実現を期待する声が確実に高まっているわけでございますけれども、後ほど知事からもこうした方々の動きに激励の言葉をいただければと思いますが、先週三月八日日本時間では、在日米軍再編をめぐる日米審議官級協議が始まっております。
 その結果が連日報道されておりますけれども、改めて確認をいたしますと、在日米軍再編の中間報告で、横田基地の軍民共用化については、具体的な条件や態様を検討するとされた一方で、自衛隊との共同利用、いわゆるダブルユースの方向性も打ち出されました。この軍軍共用化は、軍民共用化へ前進なのか、それとも後退なのかという議論がございますけれども、私はこの自衛隊との軍軍共用というのは、軍民共用化への大きなステップになるものというふうに確信しております。
 軍民共用化を進めるに当たって、米軍は、今、横田基地の空域の返還も再編協議の的になっておりますけれども、空港の航空管制については国土交通省には渡したくない。むしろ、スクランブルや緊急事態の発生、あるいは軍事知識を持った自衛官に空港の航空管制を握らせたいんだという話を前々から伺っておりましたけれども、事実、三沢基地の軍民共用化は自衛隊が航空管制を握っておりますし、小松基地でも自衛隊と民間機の軍民共用ですけれども、自衛隊が航空管制は責任を持っているわけでございます。
 こうした軍軍共用化の動きを適切に受けとめつつも、私どもの地元の期待にこたえて、一刻も早く、できれば年内にでもこの横田基地の軍民共用化を実現すべきと考えますが、知事の所見をお伺いをしたいと思います。

石原知事答弁 (省略)

谷村委員発言抜粋 ・・・在日米軍再編に関しまして、先月の十三日、瑞穂町の石塚幸右衛門町長−−大変に見識の高い方でございますけれども−−が横田基地のスコット・グッドウィン司令官や額賀福志郎防衛長官に会い、自衛隊との軍軍共用化は容認する意向を伝えられているようでございます。
 これは、全国の自治体で初めての容認姿勢を明らかにされたことになりますけれども、見返りとして国から地元振興策を引き出すためと、このように報道されておりまして、その後打ち消しございませんので、事実だと思いますが、私どもは、この軍民共用化こそが最大の地域振興策と考えているわけでございます。
 騒音問題にもきめ細かく配慮しながらも、瑞穂町にも大変大きな地域振興策となる多摩都市モノレールの箱根ヶ崎への延伸についても、この横田基地の軍民共用化にあわせて進めていくべきと考えます。
 武蔵村山の市長、市議会の正副議長、また商工会からも私自身ご要望いただきましたし、知事あてにも、また都市整備局長にも要望に行かれたと伺っております。
 横田基地の軍民共用化と多摩都市モノレールの延伸、そしてそのための新青梅街道の拡幅工事の推進について、改めて要望しておきます。 ・・・以下省略。

注:谷村 孝彦(たにむら たかひこ). 都議会公明党; 都議2期(平成13.7.23〜現); 厚生委員会. 〒189-0025 東村山市廻田町1-22-57; 電話 042(390)3050; 事務所 042(565)2312. 選挙区(北多摩第一) 

日本共産党羽村市議会議員 高橋みえ子氏質問と市側の回答 

【3】 平和のまちづくりについて

市に対し、ハドソン研究所報告についての見解を問う内容が含まれている。

 

総 括

 米軍再編に関し、当初自治体は猛反発をした。しかしその後、政府・防衛庁は自治体への介入を強め、石塚町長は軍軍共用受け入れ表明、理由として「軍民共用による騒音被害の拡大を防ぐ」と主張するが、都議会公明党は「軍軍共用は軍民共用へのステップ」と歓迎し、軍民共用による地元振興を求めている。 周辺自治体である武蔵村山市の荒井三男市長は「軍軍共用は軍民共用化実現を加速させるもの」と主張している。議論を通じて明らかなのは将来への展望が対立していることである。多摩モノレールの延伸がどれほどの経済効果があるかは不明、利用状況はどうなのか。地元の声を吸い上げると言っているが、大手ゼネコンを太らせるだけではないか。などの視点を忘れまい。「横田基地周辺市町基地対策連絡会」の見解に注目したい。

 平和委員会として考えた場合、石塚問題の核心は、軍軍共用の中心である横田への航空総隊司令部の移転にともなう、航空機の常駐があるかどうかであろう。連絡用機材は入間航空基地に置かれており、その方針は当面保持されると表明されている。 米軍・自衛隊はミサイル防御のための‘共同統合運用調整所’を横田に創設・運用を名目とした日米軍事共同作戦体制の確立を第一目的としており、谷村議員が期待するような軍民共用は無いと思われる。石塚問題は政府のアメに飛びついた米軍再編の積極的な受け入れと見るべきだろう。