「基地周辺のくらしと安全を考えるつどい」

PAC3(地対空ミサイル)配備で見えてきた日米の動き 進む一体化
入間自衛隊機墜落事故(1999年11月22日)から7年 風化させないために

日時: 2006年11月22日(水) 午後6時開場、午後6:30開会
場所: 入間市内にて(入間産業文化センター
内容: ビデオ、講演、若者達と語る
講演 「日米軍事協力のもと入間基地はどうかわるのか
講師: 紙谷敏弘氏(日本平和委員会調査研究委員)
主催: 「基地周辺のくらしと安全を考えるつどい」実行委員会
     (所沢・入間・狭山・日高平和委員会 飯能原水協)
連絡先: 新日本婦人の会入間支部  

はじめに  主催者から報告(入間平和委員会会長 平山さん)

 1999年11月22日午後1時42分ごろ、東京都世田谷区の一部、練馬区、豊島区、埼玉県で突然停電し、街の信号機も機能しなくなったことから、警察官の手信号に切り替え、3時頃になって、やっとテレビで航空自衛隊航空機墜落事故の報道があり、その具体的原因が判明した。事件の内容は、入間基地所属の自衛隊練習機T−33が送電線に引っかかって河川敷に墜落・炎上、消防隊が駆けつけ鎮火。パイロットは脱出したものの死亡、パイロット以外の人身事故は無かったものの、切れた送電線が直下の住宅街を直撃、駐車場の車に被害。近くには学校もあり近隣住民を震え上がらせた。住宅街のど真ん中に飛行場があり、過去にもたびたび墜落事故を起こしていた。この事故を忘れず問題を風化させないために今回の集会を開いている。

 この基地には高射砲部隊があり首都圏防衛の任務についているが、最近地対空ミサイルPAC3の配備問題で揺れている。11月3日の航空祭には22万人が集まり、華やかな航空ショーを繰り広げたが、その中でもPAC2の展示訓練やC1輸送機の低空飛行、ブルーインパルスの曲技飛行が披露され、飛行機好きのマニアを楽しませた。しかし同時に自衛隊の宣伝や隊員募集活動を展開、写真撮影、搭乗体験など婦人・子供向けの企画にも力を入れていた。会場入り口の最寄り駅、稲荷山公園駅(西部池袋線)は終日混雑していた。航空総隊司令部飛行隊がこの基地にあるが、同司令部が府中から横田基地に移動することが決まっていて、横田基地の米軍整備兵も制服参加していた。一説によると参加者22万の3分の2は自衛隊関係者とのことである。

 航空総隊総合訓練が行われた。「武力攻撃事態」を想定し基地警備訓練が11月8日、9日に行われた。道路に土嚢を積みヘルメットをかぶった女性隊員が参加、腹ばいで空砲を発射、音を出した訓練である。基地のフェンスの外は散歩中の人もいる中での訓練である。

 以上、スライドを使った報告は迫力があった。飛んでいる飛行機の写真はプロ並みのできばえ(?)であった。ビデオ上映であればもっと良かったのにと思った。

講演 「日米軍事協力のもと入間基地はどうかわるのか
講師: 紙谷敏弘氏(日本平和委員会調査研究委員)   ビデオ閲覧(723KB)

 千葉県平和委員会の紙谷氏が講演、日焼けした顔でがっちりした体格の人である。たくさんの資料を用意し、質問にていねいに答えてくれた。以下、質疑応答の形でまとめてみた。

Q1、地対空ミサイル「PAC2」と「PAC3」の違いは?

A1、「PAC2」は戦闘機など航空機が攻撃対象だが、「PAC3」は速度の速いミサイル用で目標が近づくと散弾銃のように固い金属片をばら撒くようになっている。ミサイルの射程は20数キロである。航空自衛隊第1高射群の本部がある入間基地(埼玉県)にあるのはPAC2で、2006年度中にPAC3に置き換える予定だ。

Q2、沖縄、入間、習志野、横須賀等PAC3の配備の状況・計画は理解できたが、米軍の配備数は自衛隊よりも格段に多い。この状況はどう理解したらよいのか。

A2、PAC2はすべての航空自衛隊高射群の高射砲隊にある。PAC3の配備計画自身、日本中を網羅しているわけではない。PAC3は重点的に配備されるとのことだが、輸送機ですぐに移動できるところに配備される。入間基地はC1輸送機があり該当する。PAC3の生産・配備が間に合わない状況であるため、当面米軍から借りて配備する。

Q3、PAC3配備の本当の目的は何か

A3、沖縄には広大なアメリカ軍基地がある。横須賀はアメリカ海軍の航空母艦基地がある。それらをミサイル攻撃から守るのがPAC3の使命だ。九州の佐世保基地にもPAC3が配備されるがここは米海軍艦隊の寄港・出撃基地である。すなわち米軍基地防御が役割だ。米軍再編計画により、横田基地にはミサイル防衛のための日米共同統合運用調整所が置かれる。入間基地へのPAC3の配備はその防御のためだ。

Q4、これらミサイルの発射指揮はだれがやるのか。

A4、アメリカの太平洋軍だ。攻撃ミサイルが発射されたことを知り、その方向を予測し、それを叩くことができるのはそれなりの体制が必要だ。自衛隊はその情報を頂いて発射指令を出す。そのためにも日米共同指揮所(共同統合運用調整所)が必要になりその訓練も行われる。空自の高射砲隊はアメリカ本土で発射訓練を行っている。

Q5、最近自衛隊関連の映画が多いが、なぜか。

A5、自衛隊の宣伝目的がある。”亡国のイージス”には14億、”戦場のローレライ”には8億、”男たちの大和”には18億円の制作費がかかっているが、軍艦や武器は自衛隊が貸している。その運行や管理に公費が支出されている。

Q6、今回の入間航空祭での新しい特徴は?

A6、PAC2システムの展示、コンバットレスキュー(ヘリコプター)の訓練展示などイラク戦争がストレートに入っているが、災害救助という宣伝がされている。

Q7、アスベスト被害について

A7、軍事施設は規制の例外になっている。潜水艦などの部品に使われている。

Q8、日本の軍事予算は?

A8、防衛庁の予算は4.9兆円。しかし総額8〜10兆円とも言われている。その理由は軍人恩給(1兆円)を厚生労働省が、自衛隊体験入隊費用を文部科学省が、南極観測艦を文部科学省が要求している。以上を総合すると世界で第2位の予算規模だ。

Q9、テロ、イラク派遣と国民保護計画の関係は

A9、「テロ特別警戒中」の看板がバス停など交通機関に張り出されているが、このようなことは世界の中で日本だけである。イラクには自衛隊の幹部候補生クラスが派遣されている。そこで実戦訓練を積んできた。彼らは国民保護協議会メンバーとして自治体に派遣されている。避難訓練など「周辺事態」を想定した訓練では、国の指示に基づいた判断をするように決まっている。

 会場からの発言も相次ぎ、衆議院議員の塩川鉄也氏も国会での議論の内容や、米軍配備が予定されている茨城県の自衛隊百里基地の様子を紹介してくれた。ミサイル防衛は先制攻撃論に発展する危険があること、憲法九条を守り戦争を起こさない国づくりが大事だと強調された。

 狭山の平和委員会や所沢平和委員会からは、このような集会をもっと開くことと社会へのアピールが必要だとの意思表示があった。日高からは入間・横田基地への軍事攻撃で、周辺住民の避難を想定した日高市保護計画が作られていることが報告された。

「つどい」参加者約80名で成功裏に終わった。